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日本語2026-06-26

弾圧の場所が、弾圧された者の聖地になった——大稻埕(ダーダオチェン)の旧台北北警察署

大稻埕を歩く旅行者が何気なく通り過ぎるカーキ色の建物。1933年建造の旧台北北警察署は、医師・蔣渭水が12回以上拘留された場所だ。今は彼の精神を展示する無料の博物館になっている。

弾圧の場所が、弾圧された者の聖地になった——大稻埕(ダーダオチェン)の旧台北北警察署

迪化街(ディーホアジェ)でドライフルーツを買い、路地のカフェでコーヒーを飲む。大稻埕(ダーダオチェン)での午後はそんなふうに過ぎていく。でもほとんどの旅行者は、寧夏路の角に立つ3階建てのカーキ色の建物の前をそのまま通り過ぎていく。

あの建物が何か、気になる人はほとんどいない。

1933年に竣工した台北北警察署だ。日本植民地時代に台湾の文化運動家たちが拘留された場所で、2018年に「臺灣新文化運動紀念館(タイワン・シンウェンファウンドン・ジーニャンカン)」として改装が完了した。入場無料。でもそれよりも、この建物の面白さはその逆説にある。

弾圧する側が建てた建物が、弾圧された者たちの記念館になった。

「台湾は病気だ——薬は教育だ」

蔣渭水(チアン・ウェイシュイ)という人物を知らないと、この建物の半分しか理解できない。

1888年に宜蘭(イーラン)で生まれた蔣渭水は、台湾総督府医学校を卒業後、大稻埕に大安医院を開いた。患者を診察しながら彼が書いた「台湾文化協会設立趣意書」には、こんな一節がある。「台湾人は病気だ。その病名は知識の栄養不良である。処方箋は教育だ」。

医師が書いた文章とは思えないほど、政治的に鋭い診断書だった。

1921年10月17日、台湾文化協会の設立大会が開かれた日、北警察署署長・近藤満夫が会場に乗り込み、蔣渭水を含む16人を連行した。それが最初の拘留だった。以後10年間で、蔣渭水はこの建物に12回以上連れてこられた。1923年には、皇太子裕仁(後の昭和天皇)の訪台に際して台湾議会設置を求める横断幕を掲げたとして再逮捕、禁固4ヶ月。

1931年、チフスで死去した。享年40歳。葬儀には5,000人以上が大稻埕から圓山(ユエンシャン)まで歩いて見送ったという。

今、台北の高速道路ランプには「蔣渭水高速公路」という名前がついている。そして彼を12回閉じ込めた警察署は、彼の精神を展示する博物館になった。

建築が語る3つの細部

建物の外壁から内部まで、見る視点を変えると別の歴史が見えてくる。

外壁の色——国防色(グオファンスー)と呼ばれたカーキ

外壁に使われている溝面レンガは北投(ベイトウ)の窯で焼かれたもので、この黄緑がかったカーキ色は「国防色(グオファンスー)」と呼ばれた。空から建物の輪郭を見えにくくするための偽装色だ。1932年着工、1933年竣工のこの建物は、台北に現存する唯一の1930年代警察署建築でもある。

扇形拘留室(パノプティコン設計)

1階の奥に、扇形に広がる拘留室がある。看守が中央の一点から全ての牢房を見渡せる構造で、囚人は自分が監視されているかどうかわからない。哲学者ベンサムが提唱した「パノプティコン」そのものだ。見られているかもしれないというだけで、人間の行動は変わる。

水牢(スイラオ)——高さ120cmの空間

1階に現存する水牢は、天井の高さがわずか120cmしかない。水を入れると、成人は立つことも座ることもできず、頭だけ水面に出してねじれた姿勢で呼吸するしかなかった。通常は非公開で、Open House Taipei などの特定イベント期間中だけ入れる。

今、訪れるなら

常設展「黄金時代の光と影」では、1920年代の大稻埕を記録した写真と文書が展示されている。1階の壁面に描かれた当時の大稻埕地図に望遠鏡型のARデバイスを向けると、当時の街並みと現在の写真が重なって表示される。

展示の説明文は日本語が少ないが、映像と写真だけでも十分伝わってくる。見学時間の目安は1〜1.5時間。

見学後は歩いて5分ほどの迪化街を散策するのがいい。乾物や漢方薬の問屋が並ぶあの通りは、蔣渭水が日々通った大稻埕そのものだ。

アクセスと実用情報

臺灣新文化運動紀念館

  • 住所:台北市大同区寧夏路87号
  • 開館:火〜日 09:30〜17:30
  • 休館:月曜日
  • 入場料:無料
  • アクセス:MRT中山(ジョンシャン)駅または双連(シュアンリェン)駅から徒歩約10分。迪化街の永楽市場(ヨンラー市場)から徒歩約5分。

周辺との組み合わせ方

  • 迪化街(ディーホアジェ):旧正月前後は乾物・漬物の問屋が並ぶ通りが最もにぎわう。普通の日は静かに買い物できる。
  • 大稻埕碼頭(ダーダオチェン埠頭):記念館から徒歩約15分。夕方の淡水河(ダンスイ河)沿いで一息つける。
  • 圓環周辺(南京西路側):小吃の屋台や老舗の麺屋が集まるエリアで夜が楽しい。

知っておくと助かること

  • 記念館周辺の道は一方通行が多く、タクシーが入れないことがある。MRTか徒歩が楽
  • 月曜休館は要確認。祝日扱いで変更になることもある
  • 水牢エリアは通常非公開。Open House Taipei(毎年10〜11月ごろ開催)のスケジュールを確認して狙うと入れることがある

参考資料

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