地元民と歩く萬華——半日コース
龍山寺と剝皮寮はすでに有名すぎる。隣の路地にある三つの場所——朝7時の生鮮市場、1935年の馬蹄形建築、そして地元民が毎日手を合わせる廟——を時系列で歩く半日コース。
台北最古の下町、萬華(ワンホア)。龍山寺(ロンシャンスー)と剝皮寮(ポーピーリャオ)はすでに観光ガイドに載り尽くしている。でも、その同じ路地の奥に、外国語のブログがほとんど触れていない場所が三つある。朝市の喧騒、1935年の馬蹄形建築、そして遶境(ラオジン)の季節でなくても地元民が毎日手を合わせる廟。観光客が来る前の萬華を、時系列で歩ける半日コースとして紹介する。
東三水街市場の朝市——7時からの台北
東三水街市場(ドンサンシュイジェ・シーチャン、新富市場とも)は、康定路と三水街の交差点に広がる生鮮市場だ。開くのは朝7時ごろ、店じまいは正午前後。昼過ぎに来ても何も残っていない。
市場に足を踏み入れると、最初に感じるのは匂いだ。生の豚肉、漬物、揚げたての油條(ヨウティアオ)——台湾の台所の匂いが一度に押し寄せる。日本のデパ地下とは全然違う、生活感のある空気だ。通路は狭いので、リュックは前に抱え直したほうがいい。
買い物客のほとんどは近所のおばちゃんたちだ。値段交渉こそしないが、常連と店主の短い会話を聞いていると、ここが観光地ではなく「地域の台所」だとわかる。フードコートのような一角では、焢肉飯(コンローファン)や湯圓(タンユエン)で朝ご飯を済ませている地元の人がいる。
一甲子餐飲(イージャーズーツァンイン)は市場から徒歩数分、康定路79號にある焢肉飯の老舗だ。豚バラ煮込みをご飯にかけたシンプルな一品で、ミシュランのビブグルマン(Bib Gourmand)に複数年連続で選ばれている。日本で言えば老舗の牛丼屋に近い感覚——地元民にとって「特別な日の食事」ではなく、日常の一食だ。価格は50〜80台湾ドル程度(約230〜370円)。営業は09:00〜19:00(土曜は〜14:00、日曜定休)。
正直なところ、市場内は混雑していて日本語はもちろん英語標示もほぼない。それでも、指差しで野菜や肉を買っている外国人を数人見かけた。身振りで十分通じる。
昼飲み用に買っておきたい小菜
後ほど新富町文化市場内の昼飲みバーへ向かうなら、このタイミングで小菜を調達しておくのがスムーズだ。正午前には売り切れることが多いので、早めに確保しよう。
- 艋舺大豐魚丸店(三水街62號)の炸牛蒡——冷めてもさくさく。量が多く、複数人でシェアしやすい。
- 周記肉粥(廣州街104號)の紅燒肉・黑白切——脆筍(竹の子の甘酢漬け)は「酒に一番合う」と地元ブログに複数の記述がある。
- 168放山雞(東三水街57號)の鹽水雞——ハーブ塩漬け鶏。さっぱりして飽きない。
新富町文化市場——1935年の馬蹄形が隣に立っている
東三水街市場を出て数歩歩くと、まったく雰囲気の違う建物が現れる。新富町文化市場(シンフーティン文化市場、英語名:U-mkt)だ。
この建物は同じ「市場」の仲間だ。1935年に日本統治時代に建設された食料品市場で、馬蹄形(U字型)の平屋建築が特徴。台湾に残る植民地時代のモダニズム建築の一つで、老朽化して閉鎖されたのち、2017年から文化施設として再活用されている。
外観だけでもかなり面白い。アーチ型の窓、赤レンガと白い漆喰のコントラスト、そして隣の現役市場との対比。大正〜昭和初期の日本の公設市場によく似た構造で、日本人の目には「見たことある」感覚があるはずだ。
内部は不定期のワークショップや展示、カフェなどが入っている。常設展示は少なめなので、建物そのものを目当てに来るのがいい。入場は無料。
注意:毎週月曜は休館。 開館時間は10時〜18時。隣の東三水街市場(現役)は月曜も営業しているので、月曜訪問なら市場を先に、建物の外観だけ眺めて次に進もう。
公式サイト:https://umkt.jutfoundation.org.tw/
馬蹄形の回廊で昼飲み——萬華世界下午酒場
建物の中に入ったら、回廊の奥まで進んでみてほしい。馬蹄形の廊下の一角に、台湾・マレーシア・日本の3人が営む昼飲みバーがある。萬華世界下午酒場(ワンホアシーチェ・シアウー・ジウチャン)だ。
日本の「昼飲み」文化を台湾に持ち込むことをコンセプトにしている。古蹟内のため火が使えないので、店内メニューは飲み物が中心だ。生ビールNT$150、クラフトビールNT$220、ハイボール・サワー系NT$250〜。平日は1杯から入れる。サービス料なし。
最大の特徴は、持ち込み歓迎の姿勢だ。 「隣の市場で買ってきていい?」と聞かなくていい——公式に「歓迎します」と言っている。盛り皿も貸し出してくれる。だからコースはこう組める:先に東三水街市場で小菜を調達して、バーのカウンターに座ってビールを注文する。古蹟の天井を見上げながら、台湾の庶民おつまみを肴に昼飲み——という体験は、市場ガイドには載っていない。
地元ブログが推薦するつまみの組み合わせ:
- 炸牛蒡(大豊魚丸店)+生ビール——冷めても食感が残り、ビールに合う
- 紅燒肉+脆筍(周記肉粥)+サワー系——脆筍が箸休めになる。複数のブログが「最高の組み合わせ」と評している
- 鹽水雞(168放山雞)+ハイボール——脂が少なくて長く飲んでいても飽きない
週末は満席になりやすい。開店直後(10時台)を狙うのがよい。
営業時間: 火〜木・日 10:00–18:00、金・土 10:00–23:00、月曜定休 低消: 平日1杯〜、週末3杯〜。サービス料なし
艋舺青山宮——地元民が毎日来る廟
青山宮(チンサングン)は、龍山寺から歩いて10分ほどの貴陽街二段にある。旧暦10月の大規模な遶境(ラオジン、神輿巡行)で知られるが、ここで紹介したいのはお祭りのない普通の日の話だ。
龍山寺との関係——二つの廟が並ぶ理由
龍山寺(1738年建立)は、清朝時代に福建省泉州から渡ってきた移民が、出身地の異なる三つの県の人間が合資して建てた廟だ。艋舺に移り住んだ移民全体の「公共の信仰の場」として機能し、今では台北屈指の観光スポットになっている。訪れると台湾人観光客と外国人がほぼ半々くらいいる。
青山宮はそれより100年以上後の1856年に建てられた。主祀するのは靈安尊王(リンアンズンワン)——三国時代の孫権の武将・張悃が死後に神格化された存在で、福建省惠安県の郷里の守護神だ。龍山寺が泉州移民全体のコミュニティ廟だとすれば、青山宮は惠安出身者たちが故郷から持ってきた原籍地の守護神にあたる。
廟の建立には具体的なきっかけがある。1854年、艋舺で大きな疫病が発生したとき、惠安の移民たちが家に祀っていた靈安尊王に祈ったところ疫病が治まったという伝承が残っている。その感謝から、1856年に正式な廟を建てた。
なぜ今でも「在地の廟」であり続けるのか
青山宮が萬華住民の廟であり続けている最もわかりやすい証拠は、毎年の遶境のあり方にある。台湾のほとんどの廟では遶境は廟方(廟の運営組織)が主催するが、青山宮の遶境は今でも艋舺の住民が自分たちで出資して神輿を街に巡行させる形が続いている。旧暦10月の遶境には、海外に移住した艋舺出身者が「この日のためだけに」台湾に戻ってくることもある。
その差は普通の日にも現れる。平日の午前中に訪れると、線香を手に静かに参拝している近所の人たちしかいない。廟埕(廟の前の広場)では、老人がベンチで世間話をしていたり、近所の店主が参拝を済ませて戻っていったりする。信仰が日常に溶け込んでいる様子が、龍山寺よりもずっと直接的に見えてくる。
廟の内部は自由に入れる。線香は廟の前で購入できる(10〜20台湾ドル程度)。強制ではないが、参拝するなら地元の人に倣って線香を持ち、手を合わせるのが自然だ。大きな声での会話や大げさな写真撮影は、ほかの参拝者の邪魔になるので控えたい。
開放時間は06:00〜22:00、年中無休。入場無料。
アクセスと実用情報
半日コース(平日の朝推奨)
| 時間 | 場所 |
|---|---|
| 07:30〜09:00 | 東三水街市場 朝市散策+小菜を調達 |
| 09:00 | 一甲子餐飲で焢肉飯の朝食(康定路79號) |
| 10:00〜11:00 | 新富町文化市場(建物見学) |
| 11:00〜12:30 | 萬華世界下午酒場で昼飲み(市場の小菜持ち込み) |
| 13:00〜14:00 | 艋舺青山宮へ徒歩移動・参拝 |
| 14:00以降 | 龍山寺駅から帰路 |
アクセス
台北MRT板南線「龍山寺(ロンシャンスー)駅」1番出口から徒歩7〜10分。悠遊カード(ヨウヨウカー)があれば改札からタッチするだけで乗れる。SuicaやICOCAとほぼ同じ感覚で、コンビニや市場での少額支払いにも使えて便利だ。
各スポットの基本情報
| スポット | 住所 | 開放時間 | 入場料 |
|---|---|---|---|
| 東三水街市場 | 台北市萬華區三水街70號 | 07:00〜12:00頃(月曜休) | 無料 |
| 新富町文化市場 | 台北市萬華區三水街70號 | 火〜日 10:00〜18:00(月曜休) | 無料 |
| 萬華世界下午酒場 | 新富町文化市場内(同住所) | 火〜木・日 10:00〜18:00、金土〜23:00(月曜休) | 1杯〜NT$150 |
| 艋舺青山宮 | 台北市萬華區貴陽街二段218號 | 06:00〜22:00 | 無料 |
最適な訪問時間
平日の朝8〜11時が一番いい。 週末は市場の混雑が増し、観光客も増える。夏場(6〜9月)は朝でも湿度が高く、日本の梅雨よりさらに蒸し暑い。水分補給は必須で、市場内に冷たい豆漿(ドウジャン=豆乳)を売っている屋台があるので積極的に利用したい。
知っておくと助かること
- 市場内はほぼ現金のみ。100〜200台湾ドルの小額紙幣を用意しておく
- 東三水街市場は正午前後から店じまいが始まる。10時前に来ることをすすめる
- 新富町文化市場・萬華世界下午酒場は月曜休。訪問日を確認してから行こう
- 週末の昼飲みバーは開店直後に満席になりやすい。10時台に入るのが無難
参考資料
- 東三水街市場 公式Facebook
- 新富町文化市場(U-mkt)公式サイト:https://umkt.jutfoundation.org.tw/
- 艋舺青山宮 公式Facebook
- Yuki's Life「萬華世界下午酒場 菜市場美食自己帶進來,早上10點就能開喝!」
- 胖樺食記「新富町文化市場内推薦平價酒吧萬華世界下午酒場」
- 小咪ma「萬華世界下午酒場|透早就能微醺」
- 微笑台灣:台北萬華一日遊
- PTT 萬華板


